色彩コラムvol.5~震災や災害は人が好む「色」を変える~
2019.07.16
平成の30年間、私たちはかつて経験したことのない災害や震災が、日本各地に広範囲で起きていました。
復興もままならないまま令和になった現在も、九州豪雨や山形沖地震など各地で未曽有の天災が起きています。
被災と被災支援が終わることなく次から次へと起きる自然の驚異に、何か巨大なものの始まりに過ぎないのかと恐怖と不安を覚えてなりません。
2011年に起きた東日本大震災の記憶がよみがえってきます。
一瞬で今までの当たり前を失い、先の見えない不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも必死で戦ってきた日々。
世間が自粛モードで、社会全体がグレーの世界のような生活。
そんな中でも希望を忘れず人々が持つ治癒力を信じ、ひとつひとつ積み重ねながら過去を乗り越えて来ました。
人と人との絆や、生きようとする力が未来に続いていると私は信じています。
人々の安全と一日でも早い平穏が来ることを願ってやみません。
震災後に私たちが求めた色
震災前と震災直後では、私たちが好む色に変化が起きていたそうです。
日経デザインによると、2011年の東日本大震災以降、暮らしや生き方に対する「価値観が変わった」と大小の差はあれ8割の人が何らかの変革が起こったと答えています。
また、全体の色の好みを見ると、震災前は多くの人が青を好んでいたが、震災後はピンクとグリーンに好みが移っていったというリサーチ結果が出ています。
復興する中で、無意識に私たちは絆や安らぎを求める色を選んでいたのです。
色が心の治癒力を回復させる
心がマヒすると感情を吐き出すことが出来にくくなります。
その状態が長く続くと喜怒哀楽のバランスが崩れ、心に大きなストレスを与えます。
人は心がつらい状態の時に、無意識に感情を表現するために選ぶ「色」というのがあります。
「心」は今、自分が必要な「色」を知っています。
「色」から「心」にアプローチすることで、本来人間が持っている自然治癒力が活性し、
心に刺激を与え感情を豊かにすることが出来るようになるのです。
では、震災後に人々が求めたピンクとグリーンは、私たちにどんな心理影響をもたらしているのでしょう。
ピンクがもたらす心理的影響
ピンクは「幸福、安らぎ、愛情、抱擁、ぬくもり、絆」などの意味があります。
緊張を和らげ、攻撃的な感情を鎮め心の動きを安定させます。
また、平和や幸福感が生まれるので、心が穏やかになり人との絆や思いやりを大切にするようになります。
生命が誕生する産婦人科が、院内の壁やカーテンをピンクにしたり、
看護師がピンクの白衣を着ているのは、こうした心理的作用を取り入れているのです。
グリーンがもたらす心理的影響
グリーンは「安心、変化、成長、癒し、平穏、調和」などの意味があります。
木や森などの自然の色でもあるので、気持ちを穏やかにし心の安定や安心感を与えてくれます。
心と体の緊張もほぐしてくれるので、疲れを癒しリラックス効果もあります。
状況を変化させたい時や、人の役に立つことで精神を満足させたい時にも選ぶ色でもあります。
非常口マークや工場現場などで見かける安全第一の緑十字などは、日本工業規格(JIS)で安全標識として緑を採用しています。
色でココロをコントロール
私たちは暮らしの中で、知らず知らずに色からの影響を受けています。
色のチカラによって、実際より暖かく感じたり寒く感じたり、時間が長く感じたり短く感じたり、心に安らぎや元気を感じています。
色は私たちの感情や心理状態に影響を与える見えない力があるのです。
震災以降ピンクとグリーンが好まれたように、自然災害が多く発生している今、
苦しいながらもこれから私たちが歩む未来に向けて、
色の力を借りながら心のバランスをとることも復興の助けになるかも知れません。
writer 成海舞乙(mao narumi)
参考資料:日経デザイン2011年7月号
torie本部講師 成海 舞乙
torie認定 色彩心理メンタルトレーナーを開講出来る、数少ない講師の一人として活動しています。色彩心理学×ライフスタイルで、他人の目を気にせずラクに生き、自分のために生きるきっかけ作りのお手伝いをしています。