ひとを想うひとの心

2019.02.01

今年どうしても行きたいところがありました。
それは、青森県下北半島の恐山です。

今から40年ほど前、
まだ子供だった私は、両親、妹と恐山を訪れました。

その時は、特に故人を偲ぶということではなく、
観光地としての青森県が好きという理由からでした。

東北自動車道が、盛岡までしか行っていなかった時代です。
我が家では、唯一、免許を持っていた父が
実家のある静岡県からワンボックスカーを
たったひとりで運転し、途中のサービスエリアや
一般道の脇にある空き地で短い仮眠をとりながら、
何時間もかけて辿り着いた、北の果て。
それが恐山でした。

名前からしてちょっと怖い印象の恐山ですが、
初めて、その地に立ってみると、
積石、手ぬぐい、風車、等々、
普段見慣れないものが順路に沿って点在し、
その世界観に一気に引き込まれてしまいました。

硫黄臭も、カラスもこの光景にはしっくりきました。
子供の感覚では、ある意味、生と死を扱う
テーマパークのようでした。

1周40分の霊園内を、順路通りに、
荒涼とした地獄を巡って行き、
賽の河原を通り抜けると、美しい湖、
宇曽利湖が現れます。

そこは、湖なのに“極楽浜”と呼ばれ
天国ってこんなところなのかな
と思わせてくれるような場所です。

湖畔に立った時、
子供ごころに何ともいえない
静寂に包まれる感覚を味わいました。
そして、初めてなのに、
懐かくて、心が落ち着く場所。
それが、感受性の強い子供だった
私が抱いた第一印象でした。

それから、40年余り。
いろいろなものを抱えすぎ、
雑念だらけの頭で、フッと
思い浮かんだのが、恐山でした。
あー、恐山、行きたい!と。

そして、ついに再訪の時がきました。
同行者は、5年前に結婚した
青森県出身の私の夫です。

夫は青森県人なのに
恐山に来る機会を
逸してしまったのだそうです。

実は、この日の夜、青森ねぶた最終日で、
跳人(ハネト)として参加するため、
何日か前から青森入りしていました。

青森市内でレンタカーを借り
いよいよ、懐かしの恐山へ。

恐山へ続く新しくできたきれいな道が
時代の経過を物語っていました。
でも、恐山が近づくにつれ、
うっすらと記憶に残る、
昔、通った道は、そのままでした。
温かく迎えられているようでうれしくなりました。

当時、運転をしてくれた父は、
10年前にがんを患い、その後、
脳梗塞、脳出血を繰り返し、
自由のきかない体になってしまいました。
そんな父のためにもビデオを撮って
見せてあげたい気持ちもあったのです。

青森市内から3時間弱。
やはり、恐山は遠かった!

でも、この遠さが、
想いをさらに掻き立ててくれるのです。

恐山の入口前に到着し、
三途の川にかかる太鼓橋を
昔のように渡ろうと思ったら、
老朽化で渡れなくなっていました。
ここにも時代の波が押し寄せていました。
残念。

新たに橋の前に像が出来ていました。
「奪衣婆と懸衣翁」(だつえばとけんえおう)です。
ここで奪衣婆に身ぐるみをはがされて、
懸衣翁に地獄行きか極楽行きか審判にかけられるのです。

三途の川から少し行ったところに、
恐山の200台ほど停められる大きな駐車場があります。

一番に目に飛び込んできたのは、
“霊場アイス”でした。
昔と変わらず、そのままの姿で
販売されていました。

変わったことと言えば、入口右手に食堂が出来たことです。

夫が窓口で入山料を支払っている間、
周りを見渡して、あれっ?と思ったことがありました。

全国各地から車で来られる方の何と多いこと。

また、大型バスからは、ご年配の方に交じり、
若い女性グループや学生さんらしき男性グループが、
次々に降りてきます。
昔は、明らかにご年配の方が多かった記憶です。
恐山に何が起きているのだろう?

調べてみたところ、
東日本大震災の犠牲になられた方々の魂が
この地を目指したともいわれており、
場内には震災の犠牲者を悼む供養塔が建てられ、
そのご親族やご関係者もお見えになっているようです。

また、もう1つ興味深い話がありました。
ある新聞に、パワースポットの1位 伊勢神宮、2位 恐山
と掲載され、若い方の来訪が増えたとありました。

恐山がパワースポット?とも思いましたが、
恐山を訪れることで、無の状態になる。
現世との関わり一切を遮断することで、
一度死を経験し、再び、生まれ変わり、
現世に戻っていくという考えから、
来ているようです。

この場が無だからこそ、
日常に迷いが生じたら、ここに来る。
自分自身を見つめ直すことで、
新しい自分に出会える。
無だからこそ、
感覚が研ぎ澄まされ、
“生きている”を実感できる。

いろいろな捉え方があると思います。

ところが、パワースポットと言われる
一方で、恐山菩提寺の院代(住職代理)で、
『恐山 死者のいる場所』(新潮新書)の著者でもある南直哉さんが、
「ここはパワースポットとは真逆のパワーレス・スポット」
とおっしゃっています。

理由として、
「恐山が霊場であるのは、パワーがあるからではない。
逆に、力も意味もないパワーレス・スポット、
いわゆる巨大な空洞だからこそ、
死者への感情を入れることができるのです」と。

あらためてこの場に立ち、
院代のおっしゃることに深く納得しました。
この場に立つと雑念が取り払われ、無になるのです。

辺りは、硫黄で草木も生えない殺伐とした光景が広がります。
耳をすますと、シーンいう音が聞こえてきそうなほどの静寂を感じます。

パワースポット、パワーレス・スポットというと対極に感じますが、
“無”の捉え方の違いのようにも感じました。
ご自身がこの地に立ち、感じるままの受け取り方で良いのだと思います。

思えば、私自身、この40年の間に、
大好きだった祖父母や、親友、恩人等、大切な人が他界しました。
恐山に、子供の頃とは違った、特別な感情を抱きました。

ここは、あの世に最も近い場所。
‟死”を意識し、故人に想いを馳せる場所。
と同時に、 残されたものの使命として、
生き続けるために、自分を見つめ直し、
全てを一旦無に帰す場所です。

ところで、表題の【ひとを想うひとの心 霊場恐山】
これは、霊場恐山への入山時にいただける案内に書かれた言葉です。
恐山は、この言葉通り、故人も、そして故人を想い遠くからやってきた人も
無という空間で包み込んでくれる場所なのです。

恐山という名前がおどろおどろしくて、
怖いというイメージが先行する方も
いらっしゃると思います。

名前の由来には諸説あるようですが、
「宇曽利山(うそりやま)」が訛って
「おそれやま」と伝わり、
「おそれざん」になったのだとか。
そう聞くと、怖くはないですが、
でも、この地に降り立つと、
やはり、ここは、「恐山」という名前がしっくりくるのです。
怖いということではなく、畏敬の念を抱かせてくれるという意味で。

なぜ、みんな、ここを訪れたくなるのか、
今回の旅で、少し分かったような気がします。

私は、雑念でいっぱいの頭を“無”にして、
生まれ変わり、恐山を後にしました。

そして、この日の夜、
青森ねぶたに跳人として参加し、
2時間、跳ね続けました。

このねぶたに参加することで私は、毎年、
“生きている”を実感するのです。

一日で、恐山と対極にあると言っても過言ではない
青森ねぶたに参加し、いつもよりもなお一層、
その感覚が協調されました。

“死”から“生”、
“静”から“動”

対極にあるものを味わうことで、
一方が、より色濃く感じられます。

対極を味わうと不思議な変化が起こります。
日頃感じている小さな不満や不安など
余計な感情が削ぎ落されて、
気持ちがフラットになり、安定するのです。

“生きていること”そのものを
ありがたいと思えるのです。
死の世界を感じることによって、
より“生きる”が強調されるからです。

同行した主人に、
「これから、毎年、恐山と青森ねぶたセットにしようか?」
と言ってみました。
返ってきた言葉は、
「毎年、このルートはきついな。」
あまりにも現実的な答えに、
ごくごく当たり前の日常に
引き戻されました。

それでも、今までの日常とは、心持ちが違います。

もっと何でもない日常を大切にしよう。
今を生き切ろう。

この夏の経験が私に、忘れかけていた
大切なことを教えてくれました。

torie本部講師 外崎 小百合

torieインスタ担当として、多くの作品に触れてきた経験を活かし、ハーバリウムオイルランプの魅力を余すところなくお伝えします! 炎の揺らぎを、是非、体験してください。全肯定、全承認の快適空間でお待ちしています♪

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