色彩コラムvol.3
~日本の色ものがたり~
2019.05.16
平成から令和に年号が代わり、新しい時代が幕開けしました。
新しい年号は、日本古来の歌集「万葉集」より引用されたと言われています。
また、「令和」には「beautiful harmony」美しい調和という意味も込められているそうです。
これから令和に生きる私たちは、人を敬い慈しむ心、命を尊ぶ心を
日本人として意識していく時代ではないでしょうか。
さくら色の国
みなさんは日本の印象を色で表すと何色をイメージしますか?
海外の人から見た日本の印象は「さくら色」だそうです。
ピンクと表現せずに「さくら色」と言うところは、
春に日本中が満開の桜に染まるイメージがあるからかもしれません。
世界中からみても、これだけ一つの花が咲くのを待ち焦がれている
国民は珍しいのではないでしょうか。
春になると天気予報と一緒に桜の開花予報もありますし、
咲いては喜び、散っては惜しむ、満開の時期が短く儚い桜は、
私たち日本人にとって特別な花になっています。
日本の四季で見る伝統色
日本古来より伝わる和色
四季折々の変化の中で多彩な色を生み出し、
深く生活の中に息づいた日本特有の色彩は、
今日でも私たちの暮らしに溶け込んでいます。
その豊かな色彩感覚は、四季のある国で暮らしている私たちには
なかなか気づきにくいものです。
では、四季折々で奏でる日本特有の「色」に視点を当てて見ましょう
◆春
梅の花が咲き、草木が萌え、可憐な野の花が春の訪れを告げる
のどかでうららかな柔らかい風を感じ、桜の花びらがハラハラと舞い降りる
春の色・・・
桜色 紅梅色 若葉色 菜の花色
◆夏
しっとりとした梅雨があけ、太陽がきらめき、
セミや鈴虫の鳴き声が元気に響き渡る
真っ青な澄み渡る空に、樹木が青々と色濃く命がみなぎる
夏の色・・・
露草色 若竹色 薄浅黄 天色
◆秋
草木が彩りはじめ、野山を染める紅葉
そして味わい深く豊かに実る作物の芳醇な香り
季節の変わりゆく切なさを感じさせる
秋の色・・・・
茜色 柿色 栗皮色 群青色
◆冬
木の葉が落ち、木枯らしが吹き始め、生物たちは冬支度を始める
富士山の山頂が雪化粧をまとい、朝日とのコラボレーションが美しい
冬の色・・・
千歳緑 消炭色 朱色 藁色
これだけの自然が、彩り豊かに繰り出す世界に生きてきた
私たち日本人だからこその感性、
先人たちが季節を愛でながら情緒を育んできた
そのDNAは今日の私たちにも受け継がれているはずです。
「いつまでもあるとは限らない、だからこそ美しい」
この美意識こそが日本人のもともと備わっている
和の感性ではないでしょうか。
その感性眠らせておくのはもったいないですね。
マイナスをプラスに変える「わび・さび」文化
昔からある日本独特の美しさを表現する言葉、「わび・さび」
『侘ぶ』と『寂ぶ』の動詞から来た言葉です。
「わび」とは気落ちする、寂しく思う、落ちぶれる
といった負の感情を表す言葉で、
「さび」とは、色あせる、古くなる、枯れる
といった見た目の負を表す言葉とされています。
いずれも寂しさや切なさを醸し出すネガティブなイメージですが、
日本人は古くから落ち葉や、苔むした岩など、
物悲しいさまに美しさを見出してきました。
「わび・さび」の色彩美
「わび・さび」を色で表現するとどんなイメージがあるでしょうか?
日本独特の寺院や茶器などは、茶や灰色、黒などで構成されており、
とても落ち着いています。
「わび・さび」の世界観は、決して煌びやかなものではなく、
自然の素材の美しさ、木や土、葉など千利休が愛した
茶室のような深い緑や茶が色彩美のように感じます。
「わび」の精神は、
必要でないもを全てそぎ落とし、完璧なまでの質素さを美しいと感じる心、
「さび」の精神は、
色あせていくものから感じられる美しさなのではないでしょうか。
こうした日本独特の価値観は、四季と言う自然の流れや、
万物に神が宿っているとする宗教観が影響しているのかもしれません。
「わび・さび」の心を、
日本人なら必ず持ち合わせている精神であるならば、
自分の中にある不完全さを受け入れる心や、飾ることのない
ありのままの姿を美しいと感じる力を大切にしていきたいですね。
writer 成海舞乙(mao narumi)
参考サイト:マイナビ、わつなぎ ご利用の環境によっては、色が適切に表示されない場合があります
torie本部講師 成海 舞乙
torie認定 色彩心理メンタルトレーナーを開講出来る、数少ない講師の一人として活動しています。色彩心理学×ライフスタイルで、他人の目を気にせずラクに生き、自分のために生きるきっかけ作りのお手伝いをしています。